忍者ブログ

urucra

けもみみ
MENU

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

1007




クラレスの誕生日なので、クラレス祭りです。
くらくらにしてやんよ!↓




クラレスの過去メモを発見したので掲載!
水晶夢世のをひっぱったり、包帯のつじつまあわせをしたりでこうなりました。
つじつま合わせってことで納得いってはなかったけど、5年ぐらいたつといやもうこれでいいかなと思った
ちなみに育て親は、水晶夢世ではモデルさんだったため名前をオリジナルに変えて、「ダガー」です。


メモのはずなのになぜか長い・・・
当時ケータイのメモで書いててメールでPCに送ったので>がついてます;;
育て親目線の話です。

(誤字どこかにあった気がするけどどこにあったか忘れた)






> 俺の最愛の妹が亡くなった。
>
> 綺麗な赤い髪の毛の、俺と歳のはなれた、9歳だった。
>
> 妹は、もっと幼い頃に重い病にかかってしまい、ずっと俺がひとりで、この山奥で必死に看病をしていた。
> 親が、お金がなくてもう手に追えないと、妹を捨てようなんて酷いことをしようとしていたから、俺が妹をつれて家出したんだ。
> とは言っても、俺にもお金がなくて、山奥の、怪物の森に近い家に住むことにした。
> ここなら、怪物を狩れば生きていける。畑を作れば野菜も作れる。
> その時から、ずっと、妹の為に生きてきた。
>
> 妹はほとんど寝たきり状態だった。
> だけど元気なときは、育てている野菜の様子を見てくれていたし、家事も手伝ってくれた。
>
> 「大きくなって、病気も治ったら、強くなりたい。お兄ちゃんを守れるくらいに。
> そして、旅をしたい。いろんな世界を見てみたい。」
>
> それが口癖のように、何度もそう言っていた。
> 俺が連れてきてから、この誰も来ない山奥の外へ、一歩も出たことないのだから。
> 俺は絶対に叶えてやろうと思っていた。
>
>
> だけど、やはり、叶えられなかった。
> この大病を治療できるお金がなかったんだ。俺はそれでも最善を尽くしたが、駄目だった。
>
> 気づいたら、妹は、冷たくなっていた。
>
>
>
> もうその時から、世を捨てたように、毎日無駄なモンスター狩りに熱中していた。
> こんな山奥、誰も来ないんだ。好きに暴れられる。
> 狩りをひていると何もかも忘れられる。
> 一日中ずっと森に籠ってる日もあった。
>
> もう、妹はいないのだから。誰も俺の帰りなんて、待ってない。
>
> そんなある日だった。
>
> 森に、人の気配がした。
> 珍しいことだった。そいつが敵なのか、ただの迷子なのか、わからなくてすぐに警戒した。
> どこだ、どこにいるんだ。
> 後ろで、モンスターの唸り声が聞こえた。
> そこか!
> 後ろを向いて、そのモンスターに、ナイフで切りかかった。
>
>
> 驚いた。
>
> 妹と同じ赤い髪の、少女がいるではないか。
>
>
> モンスターをすぐに倒して、俺は少女の方を振り向いた。
> 少女は、酷く怖がっていた。
>
> 「お前は…?」
>
> 怖がって声がでないのか、返事は返ってこなかった。
>
> 「どこから来た?どうしてここにいるんだ?」
>
> 何を聞いても、黙ったままだった。
>
>
> 「…名前、は?」
>
> 「…ク…ラ、レス…………」
>
> ク ラ レ ス
>
> 南の地方の人の名前だ。
> その声は、とてもか細くて、消えてしまいそうな声だった。
>
> 「…クラレス、か。家はどこだ?家族は?」
>
> クラレス、という少女は、首を振った。
>
> 「…ない、のか?」
>
> こく、と首が縦に動いた。
>
> 困ったな。
> いや、幸運なのかもしれない。
>
> 「………。うちに、来る?」
>
> 見捨てられない、じゃない。
> 俺が、手をのばしてしまった。
> 妹の、悔いを、この子に。
> この子を愛したい。
>
>
>
>
>
> 最初は、クラレスは無口な子だった。
> いや、無口というよりは、声が出せないようだった。
> だがだんだん慣れてきて、少しずつ喋りだしていき、今ではむしろお喋りで明るい子になった。
> やっと今の生活と、他人と関わることに慣れてきたのだろうか。
> しかし、住んでいる森からはじめて外に出て、街に連れていったときに、また喋らなくなってしまった。
> 黙ってずっと俺の足元にひっついていた。
> そのあと、クラレスに学校に行くことを薦めてみたのだが、それも嫌だという。
> 何があったか知らないが、どうやら人を怖がっているみたいだった。
>
>
>
>
>
> 「南の地方って、どんなところですか。」
> クラレスを拾ってしばらく経って、俺は働き先のマスターに聞いた。
> クラレスという名前は南の地方の名前だと思った。だから、もしかしたらそこに何かがあるかもしれない。
> マスターは顔が広いから、いろんな地方のことを知っている。どこにでも友人がいるし、いろんなところへ旅に出る。俺よりもはるかに、遠いところのことを知っている。
> 「ああ、今はほぼ無人だよ。」
> 「無人?」
> 「そうさ。なんたってあそこは、3年前に毒に汚染されたからな。」
> 「…毒?」
> 「ああ。今は危険で、すげえ広い範囲が立ち入り禁止区域になってるさ。俺の友人が手紙をよこしてくれたが、あのあと、生きたのか、死んだのか、わからねぇ。」
> 「どうして、毒を盛られたのですか?」
> 「あの地域はな、狼がいるんだよ。」
> 「…それだけで?」
> 「狼っつってもな、ただのかわいいワンコじゃないぜ。狼人間がいるんだ。」
>
> 狼人間?物語でしかきいたことがない。
>
> 「密かに住んでたんだよ。ふだんは俺たち人間と何も変わらないが、満月の光に当たれば、狼になってしまうんだ。
そして、狂ったように暴れだすんだ。
> もちろん、普通の人間もすんでいたが、ほかの地方には黙秘していた。でもな、バレちまったんだよ。ニュースになってたな。
> それから、危ないから、ってよその地方のやつらが狼人間を廃除しようとしたんだ。
> でも誰が狼かわかんねえから、街ごと潰されたんだ。毒でな。」
>
> 「いつのまに、そんなことになっていたんですね…。」
> 「ああ。ほとんど友人の手紙で知ったことだがな。どうしたんだ、行こうとでも思っていたのか。」
> 「いえ…。」
>
> 狼人間のいるところ。
> クラレスも、もしかしたら…。
>
>
>
>
>
> 「おかえりなさい!」
> 家に帰ると、クラレスが玄関を走って、抱きついてきた。
> 「よーしよしよし、ただいま。どうしたんだよ、そんなに慌てて。」
> 「今日な、私の植えた野菜が、目を出したのじゃ!」
> 「ほんとか!?どれどれ、見てみよう。」
> 「うむ!」
>
> 「おお、ホントだ。すごいじゃないか!」
> 「えへへ。図書館で見た野菜の育て方の通りにやったら、上手くいった!」
>
> よく喋るようになってから、クラレスに、過去のことを色々聞いたが、何もわからないと言う。
> 気づいたら、図書館にいて、それからずっと毎日、図書館の本を片っ端から読んでいったそうだ。
> 家族も生まれた土地の事もわからなくて、持っているのは名前だけだった。
> だから、歳は、妹の歳と同じことにした。誕生日も、俺とクラレスが出会った日にした。
>
> 「よーし、俺はそろそろ森に行ってこようかな。」
> 「今日も狩りか?」
> 「うん。」
> 「私も行く!」
> 「えっ」
> 「私も、戦いたい!」
>
>
> クラレスは強い人に憧れていた。
> 本で見たのだそうだ。
> 女の子にしては不思議なしゃべり方について聞いたときも、
> 「本で、強いお姫様がこう喋っておった。刀、というものを構えて、『決闘じゃ!』ってやっていた!」と目をキラキラさせて語っていた。
>
> 「危ないからさ…」
> 「…、いつもそう言って…。私は、病気じゃない、この通り、元気に動き回れる!」
>
> 私は、あなたの本当の妹じゃあない。
>
> わかっている。だけど、同じなんだ。
> 大切にしたいんだ。
>
> 「大きくなって、病気が治ったら、強くなりたい」
>
> ああ、確か、そんなことを言っていたな。
> やっぱり、同じなんだよ。
>
>
> 「…わかった。」
> 「ほんと!?」
> 「ああ、だけど、突然は危ないな。」
>
> 今日は、やっぱりクラレスの修行に付き合うことにしよう。
> 武器を持たなければ、危ない。
> ナイフの使い方を教えよう。
>
>
> そうして、クラレスはその日から、修行に励んだ。
> 毎日、どこにも行かずに、ただ家で植物を育ててばかりだったから、体はなまっていた。だが、新しいことが楽しいのか、生き生きとしていた。
>
>
> 「痛い…。」
> 「戦いに怪我はつきものだ。本で見ただろ?」
> 「…うむ。」
> 「でも、だいぶ使い方がなってきてるよ。はは、お前結構不器用だなあ」
> 「うっ、うるさい!絶対に強くなるからな!」
> 「よーし。ナイフが使えるようになったら一緒に狩りに行こう。ほかの武器も教えてやるよ。刀、はないけどな。」
> 「!わかった。」
>
> すごく嬉しそうな目をしていた。
>
>
>
> 「明日は、満月じゃ。」
>
> 修行の終わりに、クラレスが月を見て言った。
> 「ああ、そうだな。俺も毎晩月を見てる。」
> 「気が合うな。」
>
> 満月…
>
> ふと、狼の話を思い出した。
>
> 「しかし…私は、満月を見たことがない。」
> 「…どうして」
>
> 少し、ぞっとした。
>
> 「満月の日は、体調が悪くなる。いつも、図書館に行かずに、森の奥で唸ってた。
> …あの、もしかすると、明日、私はあなたに迷惑をかけるかもしれない。」
>
> 「…そうか。不思議だな。遠慮せずに俺を頼りな。看病は慣れてるさ。」
> 「ありがとう。」
>
>
> 満月を見たことがない。
> もしかすると、この子はやっぱり…
>
>
>
>
> 次の日は、クラレスは朝から体調が悪かった。
> ずっとベッドに横たわっていたが、明るくすると気持ち悪くなると言うから、カーテンを閉めてやった。
> それでもカーテンの隙間の光にも敏感で、徹底的に暗くした。
>
>
> 夕方になると、更に悪化して、嘔吐し出した。
>
> ああ、こんなに小さい子が、今まで、俺に会うまでずっとこの苦しみに独りで耐えていたのか。
>
> なんだか、悔しくなった。
> きっと、クラレスは、狼潰しの毒から逃げて来たのだろう?
> なぜ、ひとりにした。最後まで守ってやらなかったんだ。
>
>
> クラレスの体調の悪化は、深夜まで続き、月が沈むと、やっとおさまっていった。
>
>
>
>
> 「ごめんなさい。」
>
> 朝、目が覚めてから、クラレスは言った。
>
> 「ごめんなさい。一日中、苦しい所を見せてしまった。」
>
> 俺は、ふと笑みがこぼれてきた。
>
> 「ううん。お前が無事で良かった。」
>
> それをきいて、クラレスが、静かに泣いた。
>
> 「はじめて…はじめてじゃ。私をこんな心地の良いところに横たわることを許してくれて、水をくれて、タオルをくれて、ずっと背中をさすってくれて…。
> 私の、今のこの感情がよくわからない。経験したことがないから。」
>
> 「…そうだな。…わからないときは、とりあえず『ありがとう』と言っておけ。」
> 「…!」
> 「ごめんなさい、じゃなくて、な?」
>
> 「ありがとう…。」
> 「へへ、どういたしまして。」
>
> よく、耐えたよ。
> 可愛い、可愛い、俺の最愛の妹よ。
>
> 「…なぜ私が満月の日に限ってこうなるのかは、わからない。原因は消えた記憶の中にあるのかもしれない。」
>
>
> きっと、やっぱり狼なんだ。
> 満月の光に当たると、暴れだしてしまう。
> だから、満月の日は光に当たらないような体ができているのだろう。
>
> 「…なんでだろうな。お前と満月を一緒に見られないのが、残念だな。」
> 「…。
> できることならば、治したい。治して、あなたと一緒に、満月を見たい。」
>
> 「…そうだな。」
>
>
> 絶対、叶えようと思った。
>
>
>


> 「マスター。ちょっとききたいことがあるんだ。」
>
> 次の日、仕事帰りに、マスターに声をかけた。
>
> 「おう。なんだ。」
> 「実は先日、子供を拾ったんです。妹と同じ、赤い髪の子です。」
> 「…!そうか。…だからか。仕事が再開できたのは。」
> 「あ、はい。…それで、その…その子は、どうやら南の、あの地方の子みたいなんです。」
>
> マスターが目を丸くした。
>
> 「ほんとか!?」
> 「はい。記憶はないみたいなんですが。唯一覚えていた名前が、南の地方の人の名前だったので。」
> 「生き残ってるやつが、いるんだなあ。ん?まさか、狼じゃ、…?」
> 「…まさかなんです。たぶん、狼です。
> 昨晩、満月の夜に、ずっと暗いところに籠って体調を崩してました。」
>
> マスターは、目を丸くしたまま、はあ…と考え事をした。
>
> 「…大変な子を、飼ったなあ、お前。」
>
> 「…そんなこと言わないで欲しい。俺の大切な妹だ。」
> 「…そうか。すまない。」
>
> 「狼が生きているなんて知られたら、殺されるぞ。」
> 「…。…狼は、狼であることをどうにか、封印、とかできないんですか。
> あの子は、狼になれなくて、一晩中、ずっと苦しそうにしていてたんだ。」
> 「…ふむ」
> 「あの子を幸せにしたい。そんなもの抱えずに、暮らして欲しい。あなたの知識で、なにか手がかりがあれば教えてください。」
>
> マスターは、しばらく考えてから、頷いた。
>
> 「わかった。俺の知り合いたちから、手がかりを探してやろう。
> ただし、時間はかかるぞ。」
>
> 「いくらでも、待ちます。ありがとうございます。」
>
>
>
>
> それから、何ヵ月も待った。
> 相変わらず、クラレスは満月の夜に体調を崩していたが、
> 修行の方は進み具合はよくて、半年もすれば、ナイフの使い方を完璧にマスターした。
> ようやく、一緒に狩りに行けるようになった。
>
> 最初はやはり本物のモンスターを前にすると怖がって体が固まっていたが、
> 俺が細かく指示を出して動かした。
> だんだんコツがつかめてきて、クラレスは次第に、指示より先に動くようになり、しまいには指示がいらなくなった。
>
> 最初に、モンスターを倒したときの笑顔は、忘れられない。
>
>
>
>
> あれ?本当にこれで良かったっけ?
> 急に不安になった。
>
> 彼女は、彼女の願い通り、強くなったんだ。
> だけど、だけど。何か胸騒ぎがする。
> なぜだろう。
> いや、何でもないさ。妹がモンスターを倒すなんて、今までにない経験だからかもしれない。
> そのうち、慣れるか、と思った。
>
>
> それから、家にある武器は全て使い方を教えてやった。
> 狩り以外でも、どこかで使えるだろう。
> 槍、剣、鎌、弓矢…
> クラレスは戦うのが好きなのだろう、
> 楽しそうに次々と使い方を覚えていった。
>
> 5年もしたら、家にあった武器は全て使いこなせるようになった。
> それどころか、最初の頃を思うと、驚くほど強くなった。
> たぶん、俺を越えている。
> 今のクラレスは、最強、とも言っていいほどだろう。
> 彼女は、毎日毎日、森へ行って狩りをしていた。
>
>
>
>
> 「見つけたぞ。」
>
> ある日、マスターが突然俺に話しかけてきた。
>
> 「狼を沈められる人を、見つけたぞ。」
> 「……!」
>
> 5年前のお願いを、今までずっと探してくださったのか。
>
> 「偶然見つかった。知り合いの知り合いさ。これが住所だ。」
> 「ありがとうございます…」
> 「ああ、先に言っておくが、医者じゃねえぞ。術者だ。」
> 「…術…大丈夫です。予想通りだ。医者が治すようなものじゃないですからね。」
> 「ああ。
> その術者には、先に俺が軽く連絡を取っておいた。会いに行くといい。」
> 「はい。本当に、感謝してます。」
>
>
> 後日、俺はクラレスを留守番させて、術者のところへ向かった。
> クラレスには、狼のことは教えていない。
> 失った記憶を、思い出させたくなかった。
> 知らずに生きていくのが幸せだと思った。
>
> …いや、俺の我が儘かもしれない。
> それを知って、もし本当の親を探しに行ったりなんかしたら、嫌だ。
> クラレスの家族は、俺なんだ。
> 俺だけの妹なんだ。
> 本当の親であろうと、他人に渡したくない。
>
>
> 術者の家は、狼のいた地方に近いところにあった。
> 挨拶をしてから、家に上がらせて貰い、クラレスが満月の日に必ず体調を崩すことについて話した。
>
> 「…そうですか。それは、間違いなく狼ですねえ。生き残りがいたとは。」
> 「…やっぱり…」
> 「ええ。どうしても沈めたいのなら、術をかけるしかありません。
>
> しかし、術をかけてしずめるのは決して簡単ではありません。
> 本人にとっては、相当な負担になります。」
> 「ずっと満月の日に苦しむのと、術と、どちらが負担ですか。」
> 「それは人次第ですねえ。術が嫌だと言う人もいれば、一思いにかけてくれという人もいました。
> しかし、本人の同意の上でかけないと、大変危険です。耐えられるほどの精神がないと、……下手をすると死にますよ。」
> 「…!」
> 「狼が、人間として生きていくには、この方法しかありません。
> この術を嫌がる人が多くて、政府は町ごと殺すという手段に出ました。
> …まずはご本人に意思を確認して下さい。」
>
> 「…わかった。」
> 「術をかけるときに、額に傷を付けます。このときに、体を引き裂かれるほどの痛みが生じます。
> そして、数日間、痛みの余韻が続きます。
> 治まっても、叫びで声が枯れて、喉が痛み、しばらくは喋れなくなる人が多いです。
> …考えてみてください。」
>
>
>
>
> 術者には礼を行って、すぐに家に帰った。
> あまりいい気分ではなかった。
> ただずっと苦しむか、一瞬にその苦しみを凝縮させるかの違いでしかないのか。
>
>
>
>
> 帰ったら、いつも通り、クラレスがおかえり、と言ってくれた。
>
> 「…なあ、クラレス。お前は、満月が見たいか?」
> 「…?もちろん。…できることならあなたと一緒に見たい。」
>
> 少し、辛くなった。
>
> 「実は、その病気を治せる人を見つけたんだ。」
>
> クラレスは、吃驚していた。
> 息を吸って、ぱっと笑顔になった。
>
> 私は、なんの病気なのか?と聞かれても、
> 狼だとは言えなかった。
> 生まれつきの呪いのようなものだと説明した。
> だから、術で解くしかないんだ。
> キラキラと輝く笑顔が、なんだか辛い。
>
> 「だけど、相当、辛いらしいんだ。」
>
> 酷い痛みに耐えなきゃいけない。
> 喉が枯れるまで叫ばなければならない。
> 下手したら、死ぬかもしれない。
> 全て、話した。
>
>
> 「……そうか。」
> 「…だから、お前次第なんだよ。」
> 「…」
> 「もし、術をかけてもらうなら、しばらく、仕事を休んでずっと一緒にいてやるさ。」
> 「あなたは、どっちが良いか?」
> 「は?」
>
> 「…満月の日にずっと私の看病をするのと、数日間看病に縛られるのと」
> 「…あのなあ………」
>
> クラレスは、元々優しい子だった。
> 俺が守ると決めたのに、支えると決めたのに、クラレスはいつもひとりで立ちたがっていた。
> 迷惑をかけないように、といつも俺に気を使っていた。
>
> 「…あのなあ、クラレス。お前がひとりでできないことは、迷惑なんかじゃない。人である以上、仕方のないことなんだよ。特にお前は子供だからさ。
> それに、俺が看病を迷惑だなんて思っていたら、お前を拾ってここまで育てるわけがないだろう?どうだ?」
> 「……。」
> 「自分の為に、決めなさい。」
> 「…。
>
> 自分の為に、なら、治す。」
>
> 落ち着いた低い声で、クラレスはそう呟いた。
>
> 「満月を、あなたと一瞬に見たい。
> それが叶うならば、どんなに苦しくても良い」
>
> 「…そうか。」
>
> 俺は、そっとクラレスを抱きしめた。
> 拾ったときに比べて、背ものびたし、女性らしい体になっていた。
>
> 「わかった。俺と一緒に満月を見よう。」
>
> クラレスは、こくりと頷いた。
>
>
>
>
>
> 術者に手紙を出したら、すぐに返事が返ってきた。
> クラレスの治療は、近所のない山奥の、俺の家で行うことになった。
> 俺は、ひとつだけ術者にお願いをした。
> 狼のことは話さないでくれ、と。
> これが済んだら、何事もなかったように、普通の女の子として生きて欲しい。
> 術者は了解してくれた。
>
> 「あなたが、クラレスさんですね。」
>
> 「…はい。」
>
> 相変わらず、他人と喋るのは苦痛そうだが、少しは成長したみたいだった。
>
> 「覚悟はできてますか。」
>
> クラレスは、頷いた。
>
> 「…痛いことには、ある程度慣れています。モンスター狩りで…」
> 「…比になりませんよ。」
>
> 「…大丈夫です。」
>
> その日から、治療は始まった。
>
>
>
>
>
> ずっとクラレスの手を握ってやった。
> クラレスは、俺の手に爪が食い込むほど、強く握っていた。
>
> 目が当てられなかった。
> 耳も塞ぎたかった。
>
> 一日目は、クラレスの額に、術で印を刻んだ。朝から夜までかけて、ゆっくりと刻まれた。その間、術者はずっと術を唱えていた。
> それが終わっても、ずっと苦しそうにしていた。
> 発作が起こると、すぐに術をかけられた。
>
> 荒治療だった。
> 無理に叩いて鎮めている感じだった。
>
> 何日も、眠れない日が続いた。
>
>
>
> 「……っ、…っく。」
>
> 「クラレス…」
>
> 2日たてば、もうすでに、声が枯れていた。
>
> 「……苦しい。…私は…私を苦しめる呪いは、何なのじゃ?」
>
> 「……」
>
> 「…お願い。教えて…」
>
> 掠れた声で、クラレスはそう言った。
> だが、俺にはその頼みはきけなかった。
>
> 「…治ったら、このことはなかったことにしよう。」
>
> 「………」
>
>
> クラレスは、何を言っても無駄だと悟ったのか、静かに目を閉じた。
>
>
>
>
> 「だいぶおさまりましたね。」
> 「…っ」
> 「…この子は幸せですよ。
>
> こうやって、術をかける者のそばにずっといる人を初めて見ました。
> どれほどその人を愛してようと、一緒にいようと誓っても、あまりにもの辛さに、それは叶いませんでしたから。
>
> …それに、かつて、よその地方から拒み嫌われた狼が、こんなにも愛されてるなんて…。」
>
> 「…あとどのくらい経てば、クラレスは楽になるんだ。」
> 「ご安心ください。それほど長くは続きませんよ。一週間でこの痛みは治まります。」
>
> 「そうか…。」
>
> 俺はクラレスの髪を撫でた。
>
> 「がんばれ。あと、もう少しだ。」
>
>
>
>
>
>
>
> 「この額の印は、人に見せてはいけない。
> もし、悪い人に見つかると、殺される可能性がある。
> 常に、何かで隠しておくように。
> …今は、包帯を巻いておきましょう。」
>
>
> クラレスの頭に、包帯が巻かれた。
>
> 「…お疲れさまです。治療は、成功しましたよ。」
>
>
> 「…!」
>
> クラレスの顔から、もやが晴れた。
>
> 「おめでとう!」
>
>
> 「ありがとうございます!」
>
> クラレスは術者にお礼をしてから、俺を見、どたどたと走ってきた。
>
> そしてすごい勢いで抱きついてきた。
> 昔よりはだいぶ大きくなった。俺はよろめいてしまった。
>
>
> 「良かった…」
>
>
>
>
>



> 次の満月の日の朝、初めて、クラレスがベッドから起き上がった。
>
> クラレスは俺より先に起きたみたいで、ばたばたと走って来て、寝ている俺の腹を押し潰した。
>
> 「本当に…本当に、治った…!」
> 「…!」
> 「今夜は、満月が見れるぞ!」
>
>
> その日は一日中、クラレスに落ち着きがなかった。
> 夜が待ち遠しくて仕方がないと、大量の花を摘んできたり、野菜に謎の歌を歌っていたりした。
>
> 夕方になると、クラレスは外に出て、じっと月が昇るのを待っていた。
> そのときは、生まれ持った綺麗な歌声で、月の歌を歌っていた。
>
> 月が昇る頃に、俺も外に出た。
> 空をみると、雲ひとつなかった。
>
>
> クラレスは、月が完全に顔を出すまで、じっと黙って見ていた。
>
>
> 「…物語に聞く満月とは…貴方の今見ている満月とは、今、私が目に止めているもので、間違いないのか?」
>
> 「ああ。間違いない。俺と、クラレスが、今、見てるものだ。」
>
>
> クラレスは、くるりと俺の方に体を向けた。
> 月明かりに、涙がきらりと光っていた。
>
>
> 「やっと……夢が叶った……」
>
>
> 「ははは。何泣いてんだよ、笑えよ。」
> 「決して叶わぬ望みだと思っていたから…奇跡のようで………」
> 「…奇跡だよ。俺にとっても。
> お前の一途な思いが、奇跡を起こしたんだ。」
>
> クラレスは、ゆっくりと顔をあげた。
>
> 「…なあ、旅をしないか。」
> 「たび?」
> 「ああ。この森を出て、旅をしよう。やっと重い病が治ったんだ。まだ見たことのないいろんな世界を、一緒に見よう」
>
> 「旅をしたい。いろんな世界を見てみたい。」
> それを言っていたのは、実の妹のだった。
>
>
> 「大きくなって、病気も治ったら、強くなりたい。
> そして、旅をしたい。いろんな世界を見てみたい。」
>
> クラレスは、戦闘面でも精神面でも強くなった。
> そして今、病気が治ったんだ。
> 妹の望みは、あと、ひとつ。
>
>
> クラレスは、小さく頷いた。
> 「お兄様と一緒なら、何処へでも。」
>
>
>
>
> 次の日、旅をする前に、しばらく使わなかった体を動かそうと、クラレスと手合わせをした。
> 出発は、一週間後。まずは、危険な事に巻き込まれても対処できるよう、体力を戻した。
> 手合わせした次の日は、一緒に怪物の森へ来た。
> 家から出るときは、クラレスの頭に、必ず印を隠すための包帯が巻かれていた。
>
>
> 「久々だなあ。」
> 「ああ。まあ、少々鈍っていても、二人ならなんとかできるな。」
>
> クラレスは、久々に体を動かしても、やっぱり強かった。
> 手合わせは、俺がクラレスに圧されてばっかりだった。
> これで鈍っているというのだから、もうとっくに、俺にも把握できないほど強くなっている。
>
>
> 「今日の武器は…ナイフか。」
> 「旅をするのに、一番これが荷物にならぬからな。」
>
> 俺が、最初にクラレスに渡した武器だった。
>
>
>
>
>
>
>
>
> いよいよ、俺の夢が叶う。
> 俺は、妹の幸せだけを願って生きてきた。
> 妹の夢は、俺の夢であり、俺の生きる理由である。
> その夢を果たし、満たされた後は、どう生きようか。
> あるいは、妹の夢が、他人の手へ渡ったら。俺は、どう生きれば良い?
>
>
> 「なにっ…モンスターの動きが見えな…!!!か¨っ………」
>
> 「クラレス!!」
>
> もしそうなったら、もう俺の生きる理由などないな。
>
>
> 「クラレス!しっかりしろ!立てるだろ!」
>
>
> しかし、もしも、クラレスが一人立ちしたいと言うのなら。
> もしも、彼女の前に、白馬の王子様が現れ、俺が見えなくなるほど恋に落ちたというのなら、喜んで身を引こう。
> 妹の意思は、俺の意思だ。
>
>
> グオオオオ―――
>
>
> クラレスの意思が、俺と繋がっている限りは、この子の望みを叶え、この子を守り抜く。
>
>
>
>
> 「………ッ!私は…まだ…ッ
>
>
>
>
>
>
>
> …………!」
>
>
>
>
>
> 「クラ……レ…ス…」
>
>
>
> 守ってやるんだ。
> どんな物からでも。かな、ら、ず、――――――
>
> ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






>
>
>
>
>
> 何を伝えたかったのか、よくわならなかった。
>
>
>
> あの人の背中に私の投げたナイフが突き刺さったとき、私の方をふりむいて、私の名前を呼んだ。
> 何かを伝えたいようだった。
>
>
> 恨まれたのだ。
>
>
> きっと、そうなんだ。
> あんなにも私を大切にしてくれたのに。
> なぜ俺を殺したのだと
> 問いたかったのだろう。
>
>
> 結局、私は、あの人から私の過去のことを何も聞き出せなかった。
> …知っていたのだ。あの人は、私の正体を把握していることを。それを隠していたことを。
>
>
> 私の過去の手がかりである持病が、印を残して、跡形もなく消えた。
> 印も、あと3年もしたら、消えるのだそうだ。
> それまで、人に見せてはいけないから隠す必要がある。
>
> 印が消えれば、私の謎めいた過去はすべてなかったことになってしまう。
>
>
> …これで良いのかもしれない。
> あの人は、喋りたくもないような私の過去を知っておきながらも、私を愛してくれた。
> 私から引き離すべき過去だったのだろう。
>
>
>
> さて、すべて、なくなった。
>
>
> 家に籠りきりだった私には、友人も知人もいない。
>
>
> 昔と同じ、ひとりだ。
>
>
> だが、昔とは少し違う。人のあたたかさを知ってしまった。
> 私を愛してくれる人がいないと、私の世界の歯車は回らない。
> 私は、テーブルの花瓶に、あの人の好きだった花を一輪挿した。
>
>
>
> 「一緒に旅をしよう」
>
>
>
>
> ああ、そんなことを言っていたな。
>
>
>
> 立ち上がろう。
> 印を隠す包帯を巻いて、
> 金と、それからひとつだけ、荷物をもったら出発だ。
>
>
> 貴方は、私を恨み殺すのか、守り生かすのか。
> 教えてくれ、この刃で、
> ダガー。
>
>



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




その後、お金のなさに困りながら色んな国を一人旅します。
その設定もちょっとあるので↓

・窃盗をすることもあった。
・本当に困ったときは体を売るしかないと売春屋を訪ねようとした(道端でキョドっているところを優しい人に拾われ、少しだけお世話になる)
・闘技場で優勝すれば大金が貰えると聞き、女だからと舐められつつあっさり優勝する


うるんと会って心の闇晴れて、過去と向き合うこともあります↓

・ふと思いつきでダガーと住んでいた家に戻り、テーブルの花瓶に挿した花を入れ替える。
・そのことを話すとうるんと刃燻に「行きたい!」と言われ強制的に過去の世界へ旅行になる

その旅行では、ダガーに拾われる前にいた図書館に行って職員さんと話したり、闘技場に顔を出して歓迎されたり・・・と楽しいときを過ごします。
そして「過去を捨て、これからは前を向いて・・・」みたいなノリで昔住んでた家を壊します。(※無駄にうるんちゃん大活躍)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

追記で、こうだったらいいなーという設定↓

《クラレスは、図書館に居た以前の記憶と、ダガーが最期に想っていた意志を一生知ることはない。》



クラレスは全てが絶対じゃなくて、人それぞれの感じ方で受け取ってもらいたいです。
だからこの無駄に細かい過去設定は、絶対じゃないです。クラレスを好きでいてくださる方が「なんか違う」と思ったら違っていいとおもいますε(*'-')з



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


クラレスについて語ってた文章こぴぺ。
今読んで「わかるぅ~↑」ってなったので↓



クーってシリアスじゃなければだいたいこんなイメージがあります。
すごく消極的で、コミュ障で不器用。「うーん」って感じの顔をする。
ツーンじゃないんだよなあ。。。シリアスだとツーンでいいけど普段はうーんって感じ(笑)
でも旅だとか買い物だとか、自分のしっかりできる場面と、警戒してる人にはツンとした顔です。
んー・・・心を許した人に見せる表情か。最近クラレスのまわり刃燻以外は心許してる人しかいないからな!
彼氏さんできる前はみんなクーちゃんいじめしてたのですっげーツンツンしてたような。

あとあまのじゃくじゃないところはこだわりです。
「べつにお前のためじゃないんだからね!」とか言いません絶対言いません。
照れても「うるさい!」とか言わないかな。「照れるからやめてくれ」っていいます。
でもからかってるだけの褒めは照れちゃっても「うるさい」って言うよ。
「やめろ」って言ってるときはほんとにやめて欲しいはず。

返しはまあまあ素直だけど、こっちから真剣に人に伝えるのは不器用。
例えばバトル的なストーリーなシリアスシーンだと、相手の間違ってることに対して、自分が正しいと思っていればナイフも突きつけます。
「落ち着け、今は行くな」みたいなシーンで。
相手を思っての行為なんだけどね。
あと普段だったら、手紙だとかは書きたいこと多すぎてまとまらないからすごくそっけない文章しか書きません。
ラブレターだったら「好き」の二文字だけ。



PR

× CLOSE

プロフィール

HN:
なつか
性別:
非公開

カテゴリー

最新記事

(01/28)
(01/16)
(12/28)
(12/15)
(10/17)

P R

× CLOSE

Copyright © urucra : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]